田中さんは、ミュージシャンで音楽プロデューサーの小林武史さんが2003年、ミスター・チルドレンの桜井和寿さん、そして坂本龍一さんたちと共に設立したap bankにつながるアイディアを、小林さんが行っていた環境問題に対する勉強会で講師を務められ、提供しました。
手塚「まず“未来バンク”についてお教えください」田中「正式名称は未来バンク事業組合と言いまして、1994年に設立しました。お金を組合に皆が出資して、そこから組合員に対して融資をします。ですから閉じたバンクで、出した人と借りる人が同じなんです。しかも目的が3つだけに限られています。環境に良いことをしようと思っている場合、それと福祉と市民事業です」手塚「金利が低いということですが...」田中「固定で3%です。ようは非営利でお金を貸すということをしたいので、人件費をとるわけでも、利益を出すわけでもないので、安いのです。もし儲かったとしても配当しません。そのかわり金利を下げていきたいんです。出資する人にとっては得することは絶対にないけれど、損することはある...にもかかわらず出資してくれる人がいるので、成り立っているんです」
手塚「いわゆる銀行との違いは?」田中「私は環境問題をやっていますので、各地で造られるダムや原発、高速道路、空港など、そして戦争は私自身は反対です。でも郵便貯金や銀行にお金を預けていると、そういうところにお金を使われてしまうんです。例えば、イラクの戦争を例にとると、アメリカ自身はお金がありませんから“アメリカ国債”を海外投資家に買ってもらって賄っています。その国債を40%以上買っているのが日本なんです。で日本もお金がありませんから“日本国債”を発行します。それを買っているのが銀行なんです。ということは自分自身の行動と自分のお金の行動は正反対のことをしているわけです。あえて言うなら、私たちが銀行に預金することで、イラクにミサイルを届けることが出来た、ということです。それを嫌ってこの未来バンクを作りました」手塚「私たちが貸付先を選べないんですか?」田中「そういう動きは世界的に始まったばかりです。例えばヨーロッパではエコバンクがそうですね。これを社会的責任投資とよんでいます」
手塚「私たちは自分の預金に対しても責任を負わないといけないということですね」田中「でもそういうことを気にしている市民が増えてくることで、金融機関も考え始めます。"CSR"企業の社会的責任という意味ですが、そういう動きが始まってくれば、私たちも金融機関を潰したくてやっているわけではないので、嬉しいですよね」 |