矢島稔さんは多摩動物公園昆虫館を創設され、上野動物園水族館長を経て、多摩動物公園園長、東京動物園協会理事長を歴任され、現在、群馬県立ぐんま昆虫の森園長を勤められながら、日本ホタルの会の会長をされています。
手塚「私は野生のホタルを見たことがないのです」矢島「僕は東京の手塚治虫さんの4つ下で、東京の中野出身です。それでもう僕の子供の頃にホタルはいなかったです」
手塚「ホタルの会というのはどういう団体なのですか?」矢島「1992年10月に発足しました。私は多摩動物園の中に昆虫館を造り、その中にホタルの飼育場を作りました。それが31年前。それまで日本人は水槽に水を入れて幼虫を飼っていたんです。ところが四国とか九州にはホタルがすごい数いるんです。それで訪ねていきますと“水槽でやっていては限界がある、幼虫を見るには良いですが、そこでホタルにすることは出来ない”ということを教わりました。それでどうすればいいか聞いた所、ホタルは渓流に住んでいるので、渓流を作ってなるべく自然に近づけた環境を作って、そこで飼うことが良いんだという結論でした。それで多摩動物園に、外に限りなく渓流に近い物を作って、飼育しました。これはうまくいきました。ところがだんだん数が減ってきたんです。私も不思議でした。それでこのままでは日本のホタルはいなくなるかもしれないと思い、みんなで力を合わせて日本のホタルの将来のために会を作りました」
手塚「主に私達が目にする活動はなんですか?」矢島「ホームページを開いています。4ヶ月ぐらいで、3万のアクセスがあります。また毎年色々なデータを持ち寄ってシンポジウムを行っています。またホタルを育てるには川のことや植物のこと、川の中の小動物のことも知らなければいけません。ですからそういうことに詳しい方をお呼びしての勉強会を年に3回ぐらい行っています。年に4回季刊誌を発行しています」
手塚「昔に比べてどのくらいホタルは減少しているのですか?」矢島「数えている方はいないんです。何故かというとホタルが光る時間は夜8時〜10時と、深夜12時〜2時の2回光るんです。でホタルの寿命は雄が1週間、雌が2週間。毎日数えるとダブってしまいますよね。ですから数えられないんです」手塚「昔はここに良くホタルがいたけど今はいないという所は?」矢島「そういう場所はここ50年間で、3分の1はあると思います」手塚「それの主な原因は?」矢島「川を汚してしまったということが言えます。ただ少しホッとすることもあります。昔はいなかった所にホタルが出てきたという所があります。それは下水道が整備されて、家庭排水が川に流れ込まなくなった所です」 |