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7月7日 ゲスト:早稲田大学人間科学部教授(工学博士)
早稲田大学エジプト学研究所 所長 吉村作治さん |
手塚「エジプトに興味をお持ちになったきっかけは?」吉村「10歳の時に学校の図書室で読んだ“ツタンカーメンの秘密”という本がきっかけです。その時はとにかくエジプトに行ってみようと思い、また大学に入ったときに日本で“ツタンカーメン展”というのがありまして、一気に火がつきました。それで1966年、22歳の時に初めてエジプトに行きました。手塚「始めていったエジプトの印象はいかがでした」吉村「実はタンカーで行ったんです。東シナ海を抜けて、クエートに上陸し、バスでシリア、ベイルートに行き、ベイルートから船でアレキサンドリアに着きました。約2週間の旅でしたね。見る物すべてが驚きでした。で7ヶ月で日本に帰ってきて、すぐにカイロ大学に留学して、13年エジプトにいました。ピラミッドは我々が考えているのとは全く違います。大きさだけではなくて、質感、量感すべてですね。揺れるんです、ピラミッドではなくて、自分たちの感性というか感じ方が。それで、ちょっとやそっと勉強した位じゃダメだ、100年はかかるなともって、本気でやってみようという気にさせられました」
手塚「エジプト学や考古学に興味のある学生は、ものすごく好奇心が旺盛なんでしょうね」 吉村「そうですね。多いときは弟子にしてくれと言う人が100〜200人いますね。でもその中で10人ぐらいですかね〜。考古学をやるのは常識がなければダメです。好奇心と常識、これが必要ですね。それと研究者は自己中心的な人の方が成功する。他人と比較しちゃダメなんです」
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手塚「吉村さんは食べ物が好きで、造詣が深いんですが、現在古代エジプトビールの復元プロジェクトをやってらっしゃるそうですが?」吉村「今まで食べ物、飲み物は学問のまな板に載らなかったんです。でも私は食べなきゃ、飲まなきゃ死んじゃう。その次に学問、と思っているんです。それで古代エジプトの食べ物にすごく興味があって、レシピを集めていたんです。でビールは今まで言われていたのは、パンを作ってそれをお湯に入れて蓋をして、発酵させる、と言うのが定説なんですが、作ってみると酸っぱくて、アルコール度も1〜2%程度なんです。ところが昔の物語を読んでいると、ビールをドンドン飲ませて、酔わせてワインを飲ませないようにしようと言う下りがあるんです。と言うことはこの程度の度数では酔うまでいかないと思うんです。で、ビール会社の醸造学の専門家に相談したんです。でもよく分からないと言うことで、一緒にやりませんかと言ったらビール会社も大喜び。でだいたい分かったんですが、まだ発表出来ないんです。8月に全部作って発表するんですが、だいたいアルコール度数が10度ぐらいですよ。これでやっと物語と結びついたんです。これを実験考古学と言うんです」
手塚「食べ物の方に目がいくというのは吉村さんらしいですよね」吉村「で、どうせならと言うことでレストランをプロデュースしているんです。そこでは僕がエジプトで集めたレシピを元に、料理を出しています」
吉村「昔手塚先生と一度だけABCでお会いしたことがあるんです。エジプトの王、アクナトンをテーマにした物語を書きたいと言うことで、東京に戻ったら会いましょうという話をして、数ヶ月、連絡しているうちにお亡くなりになってしまったんです」手塚「そうだったんですか〜」吉村「その時お話ししていて、未来というのは過去からしか考えられない、過去がキチッと分かっている人だけが未来が分かる、と言う話をしたんです。皆さん誤解してるんですよ、考古学者はただ掘ればいいと思ってるんです。そんなのは発掘学者です。我々は考えなくちゃいけないんです、考古なんですから。でもそれは我々がいけないんですよ。努力して考古学がこういうものだと言わないから。なぜ言わないか、分かってないんです。日本は考古学が新しいから。皆さんにはそういうことを分かっていただきたい」
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7月14日 ゲスト:吉村作治さん |
手塚 「古代の生活をふまえて今の環境問題についてお聞きしたいのですが」吉村「我々はもう一度自然という物を見直さなければいけない。古代エジプト人の考え方は、自然がすべて神様なんです。その神様のおかげで我々は生かしてもらっている。と言うことなんです」手塚「日本もそうですよね」吉村「八百万の神と言うことで、日本の方が多いんです(笑)でそれを崩したのがギリシャ人なんです。自然とはただ単に仕組みだという風に教えたんです。東洋は最後の最後まで、自然は仕組みではなくて神なんだと言っていたんですが、東洋がドンドン西洋化してきて今その問題点がでてきてるんです。循環型の社会を目指そうと言っていますが、と言うことは循環していないと言うことですよね。すべて元に戻らなくなる、これが問題なのです」手塚「自分たちの生活は常に自然とともにあると考えると、自然に帰すという発想が出てきますからね。その敬う気持ちがあるからこそ、循環型の社会になっていたんですね」
吉村「このまま行くと、先はないですよね。でも地球は滅びないんです。少なくても50億年は。どういう事が起きるかというと、地球が強権を発動して、人間を滅ぼすんです。でどうするか、原始時代に戻すのは無理だから100年、前に戻すだけでも全然違うんだよ」
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手塚「吉村さんの今後活動は?」吉村「一つはエジプトで3カ所発掘を行っているので、それを続けて、後輩を育てていく。もう一つは21世紀の考古学で重要なのは、昔の物を修復して、保存すると言うこと。そして、子供達に夢を与えたい、もってもらいたい。子供達に知の伝導というのをやりたいですね。あとは古代食の復元とかいろいろやりたいですね。
今の大人に夢を持たしてもしょうがないでしょ。子供ですよ。やっぱり」手塚「古代ビール、すごく楽しみにしています。これからも頑張ってください」吉村「頑張ります」 |
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坂本徹也さん |
中村征夫さん |