手塚「安藤先生、この『農学生命科学研究科』ではどういった研究をされているのですか?」安藤「いわゆる農学部なんですが、今や生命科学分野、DNAや生命の神秘といった所まで研究範囲が及んでいますので、広い意味で生命体を扱っています。その中で我々は木材資源をいかに有効に使うかという研究をしていて、その中でもとりわけ建築材料へいかに転換して、木造建築を作るかということが、私自身のテーマの分野です」手塚「また先生は『林政審議会』特別委員を努めていらっしゃいますが、どういう会なのですか?」安藤「具体的には林業白書を作ることが主たる目的です。現状の分析、歴史的分析をふまえて、これからどうしたら良いのかということをその白書の中に盛り込んでいくお手伝いをしています」
手塚「安藤先生はなぜ、森林や木材に興味を持たれたのですか?」安藤「中学高時代はワンダーフォーゲルをやっていまして、山の中を歩いていたんです。それで建築は趣味だったんです。ですから建築に進んだ学生より、本を読みあさっていたんだと思います。そのうちに木と建築が結びついてきてしまって、今日に至ったわけです。特に何になりたいと思っていたわけではなかったのですが、結果的にそうなったんです」
手塚「日本の森林の現状をお教えください」安藤「日本の国土の3分の2が森林なんです。その内の4割は人工林です。森と言うと人の手の入らない山を思いがちですが、日本の山というのは戦後、植林によって大分人の手が入って今日に至っています。戦後、木を切り過ぎてしまって、植林をしたその木が育ってちょうど今使う時期になったんです。ですから今これらの木を切って、新しい木を植えないと50年後100年後、育った使える木が無くなるんです。森を守るということは使いながら、また植えながら更新していく必要があるのです。又木を育てるためには間伐をしなければいけない、そうしないとモヤシのような木ばかりなってしまいます。そしてその切った木を有効に利用することが求められています。主に住宅用材や紙として使いますが、紙の分野で国産材はほとんど使われいません。ですから日本の木は余ってしまっている、木を切らない状態にあります。ここがポイントで、これは将来に向かって難しい曲面に我々は立っているのです。地球を救う、あるいは日本の森林を救うには、日本の木を使い始めなければいけない、輸入された木は減ると思いますが、日本の木を活用することがポイントだと思います。山がモヤシのような木ばかりですと大変なことになります。台風や大雨があっても健康な木でしたら水を蓄えてくれます。又日本の飲み水は安全と言われています。これも森が蓄えているからなんです。ですから我々の大事な飲み水、生活の安全、地域の安全を山が、森が保水ということで果たしているわけです。このバランスが崩れてしまうと将来、安定的な生活が出来なくなってしまうというわけです」」
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