山岸尚之さんは2006年12月にご出演されています。
今年2月に国連の『気候変動に関する政府間パネル』が地球温暖化に関する4回目の報告書『Summary for Policy Makers』を発表しました。この中で「地球の平均気温の観測結果から考えて地球が温暖化しているのは疑問の余地がない。今後2100年までの間に最大で、世界の平均海面は59センチ上昇し、平均気温は6.4度上がるだろう」と書かれています。
手塚「まず『気候変動に関する政府間パネル(IPCC-Intergovernmental
Panel on Climate Change)』とはどういうものなのですか?」山岸「1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が合同設立しました。基本的な役割は世界中の気候変動に関する、科学的、技術的、社会経済的な知見を取りまとめて、評価をする機関です。この機関は各国政府に対して具体的な提案、“こうするべきだ。こうしなさい。”と言ったことは行いません。また研究機関でもありません。利用可能な最新の研究成果を集めて総合的、かつ包括的に評価をする機関です。特徴的なのは報告書を作成するプロセスにあります。政府の人も作成の段階で確認します。このようにすると各国政府、いろいろ利害がありますから複雑になる側面もありますが、この報告書に対して政府も参加したということになります。ですから出てくる報告書がより権威のあるものになるわけです」
手塚「報告書にまとめるには何段階かあるのですか?」山岸「細かいところまで言ってしまうとかなりの数になります。とりあえず背景を説明すると、今回出された報告書は3部作の内の第1部なんです。IPCCには3つの作業部会がありまして、今回出された報告書はそのうちの第1作業部会が出した報告書の、要約なのです。第1作業部会は温暖化に対する化学を担当しています。第2作業部会は温暖化に対する影響を、第3作業部会は温暖化の対策を担当しています。第2作業部会の政策決定者用の要約(Summary
for Policy Makers)が発表されるのが、4月の頭ぐらい。第3作業部会の『Summary for Policy Makers』が出てくるのが5月の頭ぐらいです。そしてそれらを統合する、『統合報告書』が作られます。それが発表されるのが11月ぐらいです。これらを全部まとめて『第4次評価報告書』という名前がついています」
手塚「今回が4回目ということは、これまでに3回報告書が出されたということですね。それぞれの内容は?」山岸「内容は温暖化からずれているわけではありません。1990年に『第1次評価報告書』が出されています。この報告書によって温暖化というものが国際的に取り扱わなければいけない問題だということを定義し、1992年にリオデジャネイロで行われた『地球サミット』で、『京都議定書』の親の条約にあたる『国連気候変動枠組条約』の署名が開始されました。『第2次評価報告書』は1995年に出されました。これは“このままでいくと温度上昇幅がこれぐらいになりますよ”という内容を含んだ報告書です。それを受けて1977年に『京都議定書』が採択されました。『第3次評価報告書』は2001年に出されました。この時は『京都議定書』の細かい部分を決めた『マラケシュ合意』が合意されています。このように国際的な動きをプッシュしてきたと言えます」
|